円形脱毛症の塗り薬候補CINAINUが、米FDAのブレークスルー・セラピー指定を受けました。開発企業が2026年10月13日に発表したもので、対象は2歳以上の子どもから大人までの中等症〜重症です。ただし指定は承認ではなく、日本で使える薬でもありません。この記事では、発表の中身と論文で公表された試験の数値、日本での状況を一次情報からまとめます。
CINAINU(LH-8)とはどんな薬か

CINAINU(開発コードLH-8)は、スイスのLegacy Healthcare社が開発している治験中の外用液です。頭皮に塗るタイプで、複数の植物抽出物を組み合わせた「ボタニカル医薬品」と同社は説明しています。
査読論文では、4種類の植物抽出物を含む外用液と記載されています。同社は、FDAが規制する複数植物由来のボタニカル医薬品として初めてのブレークスルー指定だと発表しています。
「植物由来」と聞くと穏やかな印象を持ちやすいですが、CINAINUは医薬品として試験されている段階です。由来によって安全性が保証されるわけではない点は押さえておきましょう。
2026年10月13日に何があったか

Legacy Healthcare社は2026年10月13日、CINAINUがFDAのブレークスルー・セラピー指定を受けたと発表しました。対象は、成人・青少年・2歳以上の小児の中等症〜重症の円形脱毛症です。
ブレークスルー・セラピー指定は、重い病気で既存治療より大きな改善を示す初期の根拠がある薬について、開発と審査を早める仕組みです。FDAの説明では、指定を受けても承認が約束されるわけではありません。
同社は今後、成人・青少年・小児を対象にした国際共同の第3相試験を準備中としています。試験の開始時期や詳しい設計は、今回の発表には書かれていません。
試験の結果(第2/3相 RAAINBOW試験)

指定の根拠になったのは、2〜17歳の子ども107人が参加した第2/3相RAAINBOW試験です。無作為化・二重盲検・プラセボ対照で行われ、結果は英国皮膚科学会誌に掲載されています。
参加者はCINAINU群とプラセボ群に2対1で割り付けられ、24週間使用したあと、薬を使わない24週間の経過観察が行われました。主要な解析は、事前に決めた中等症〜重症の基準を満たす62人が対象です。
| 評価項目 | 結果(論文の記載どおり) |
|---|---|
| 24週時点のSALTスコア相対変化(主要評価項目) | プラセボとの調整平均差 +26.3%(95%CI 0.1〜52.5、P=0.0488) |
| 24週時点でSALTが40%以上改善した人の割合 | 26.2%(プラセボ5.0%、P=0.0484) |
| 48週時点のSALTスコア相対変化(治療終了から24週後) | プラセボとの調整平均差 +39.4%(95%CI 13.1〜65.6、P=0.0033) |
| 安全性 | CINAINUに関連する重い有害事象はなかったと報告 |

SALTは頭皮の脱毛範囲を数値化する指標です。主要評価項目は統計的な基準を満たしましたが、信頼区間の下限は0.1%とゼロに近い値でした。参加者も数十人規模のため、効果の大きさは大規模試験で確かめる必要があります。
大人を対象にした試験の結果は、今回の発表や論文では示されていません。大人への効果は今後の第3相試験で検討される段階です。
日本での状況
2026年10月16日時点で、CINAINUは日本で承認されていません。日本での承認申請や国内での治験について、開発企業の発表や公表情報では確認できませんでした。
RAAINBOW試験はClinicalTrials.govと欧州の臨床試験登録に登録されていますが、日本は実施国に含まれていません。日本で使えるようになる時期は、現時点では見通せません。
なお国内では、内服のJAK阻害薬バリシチニブが12歳以上の子どもにも使えるようになりました。詳しくはバリシチニブが12歳以上の円形脱毛症に使用可能になった件の解説をご覧ください。
わかっていること・わかっていないこと

- わかっていること:FDAがブレークスルー・セラピー指定を付与したこと(企業発表)
- わかっていること:子ども107人の第2/3相試験の結果が査読論文で公表されていること
- わかっていないこと:大人での効果、長期の安全性、第3相試験の開始時期
- わかっていないこと:米国や日本で承認されるかどうか、その時期
企業の発表には「意味のある発毛」といった表現がありますが、判断の材料にするのは論文の数値と今後の試験結果です。ニュースの見出しだけで期待しすぎないことが大切です。
今できる選択肢
CINAINUは治験中のため、今すぐ受けられる治療ではありません。子どもの円形脱毛症は、年齢や脱毛の範囲、経過によって検討される治療が変わります。まずは皮膚科で診断を受けることをおすすめします。
治療の効果や副作用には個人差があります。薬の選択や使用は、必ず医師と相談して決めてください。現在使える治療や新しい薬の動きは、次の記事で整理しています。
円形脱毛症は自己免疫が関わる病気で、男性型脱毛症(AGA)とは原因が異なります。相談先は皮膚科が基本です。
よくある質問
CINAINUは日本で使えますか?
2026年10月16日時点で、CINAINUは日本でも米国でも承認されていません。日本での承認申請や国内治験の発表も、公表情報では確認できませんでした。
ブレークスルー・セラピー指定は承認と同じですか?
同じではありません。FDAが開発と審査を後押しする仕組みで、薬として使えるようになるには、今後の試験結果と承認審査が必要です。
植物由来なら子どもにも安心ですか?
植物由来であることは安全の保証になりません。CINAINUは治験中の医薬品で、長期の安全性や大人での効果はこれからの試験で確かめる段階です。
子どもの円形脱毛症に気づいたらどうすればいいですか?
自己判断で様子を見続けたり市販品で済ませたりせず、皮膚科を受診してください。年齢や脱毛の範囲によって検討できる治療が変わります。
まとめ
CINAINUは、2歳以上の子どもも対象にした円形脱毛症の塗り薬候補です。2026年10月13日にFDAのブレークスルー指定を受けましたが、承認された薬ではありません。
子ども62人の主要解析では統計的な基準を満たした一方、規模は小さく、大人での結果も未公表です。日本での開発予定も確認できていません。気になる症状があれば、新薬を待つより先に皮膚科で相談しましょう。
出典
- Legacy Healthcare「CINAINU® Receives FDA Breakthrough Therapy Designation for Alopecia Areata」PR Newswire(2026年10月13日)
- Blume-Peytavi U, et al. Efficacy and safety of Cinainu in paediatric alopecia areata: phase II/III trial. British Journal of Dermatology 2026;194:37-46(PubMed)
- ClinicalTrials.gov「Efficacy and Safety of LH-8 in Paediatric Alopecia Areata」NCT03240627
- EU Clinical Trials Register 2016-003208-30
- U.S. FDA「Breakthrough Therapy」








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