重症の円形脱毛症の飲み薬バリシチニブ(オルミエント)が、2026年6月に12歳以上の子どもにも使えるようになった。対象は体重30kg以上で、脱毛が広範囲に及ぶ難治の場合に限られる。
本記事では、日本イーライリリーの発表とPMDAの審査報告書をもとに、承認の内容、試験の数値、副作用、薬価を整理した。保護者の方が受診前に知っておきたい点もまとめている。
バリシチニブはどんな薬か
バリシチニブは、1日1回飲むJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬である。国内では関節リウマチやアトピー性皮膚炎などに加え、円形脱毛症の効能をすでに持っている。
円形脱毛症は、免疫細胞が毛根を攻撃して髪や眉毛、睫毛が抜ける自己免疫疾患とされる。同社の発表は、小児では重症化しやすい傾向が知られていると、日本皮膚科学会のガイドラインを引いて説明している。
AGA(男性型脱毛症)とは原因がまったく異なる病気で、AGA治療薬の対象でもない。JAK阻害薬全体の動きはJAK阻害薬と薄毛治療の動向で解説している。
2026年に何があったか
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年2月26日 | 欧州のCHMPが12歳以上への適応拡大に肯定的見解。 |
| 2026年4月28日 | PMDAが審査報告書を作成。 |
| 2026年6月19日 | 国内で円形脱毛症の用法・用量の一部変更が承認。 |
| 2026年9月25日 | Lillyが米FDAによる12歳以上での承認を発表。 |
承認後の用法・用量は「通常、成人及び12歳以上かつ体重30kg以上の小児にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。」である。
効能は「円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)」のままで、軽い円形脱毛症が対象になったわけではない。欧州の承認日は、一次資料では確認できなかった。
試験の結果(BRAVE-AA-PEDS試験)
根拠は国際共同第3相試験BRAVE-AA-PEDS(NCT05723198)の青少年コホートである。SALTスコア50以上の12歳以上18歳未満・30kg以上の257例が参加し、日本人は16例だった。
SALTは頭部の脱毛面積を0〜100で表す指標で、SALT20以下は脱毛面積が20%以下を意味する。以下は日本イーライリリーが公表した36週時点の数値である。
| 36週 | 2mg | 4mg | プラセボ |
|---|---|---|---|
| SALT20以下 | 27.4%(23/84) | 42.4%(36/85) | 4.5%(4/88) |
| 眉毛スコア0か1 | 24.1%(13/54) | 50.0%(27/54) | 0.0%(0/60) |
SALT20以下のプラセボとの差は、2mgで22.8、4mgで37.8ポイントだった。いずれもp<0.001で、統計学的な有意差が認められたと発表されている。
米国の発表では、頭髪の80%以上が覆われた割合は4mgで42%、2mgで27%、プラセボで5%とされた。90%以上は37%、21%、2%だった。
副作用と安全性
36週までの主な副作用は、2mg群でざ瘡6例(7.2%)、上気道感染・インフルエンザ・上腹部痛・頭痛が各2例(2.4%)だった。4mg群はざ瘡5例(5.9%)、鼻炎と好酸球増加症が各4例(4.7%)、悪心と頭痛が各3例(3.5%)である。
PMDAの審査報告書では、成人の円形脱毛症患者に比べ、12歳以上18歳未満で皮膚真菌感染症やうつ病・自殺念慮の発現割合が高かったとされる。皮膚真菌感染症はいずれも非重篤だった。
同報告書は、日本人部分集団は例数が少ないため解釈に注意が必要だとしている。気分の変化など気になる様子があれば、早めに主治医へ伝えることが大切だ。
なお、バリシチニブの添付文書には警告として、結核・肺炎・敗血症・ウイルス感染などの重篤な感染症の新たな発現や悪化、悪性腫瘍の発現が報告されていることが記載されている。投与前の検査や投与中の観察は医師の管理のもとで行われ、発熱やせきなど感染症が疑われる症状が出たら速やかに主治医へ連絡する必要がある。
日本での状況と薬価
国内では2026年6月19日に承認され、12歳以上かつ30kg以上の小児にも処方できるようになった。薬価は4mg錠4,820.00円、2mg錠2,472.50円、1mg錠1,356.80円である。
内用懸濁液2mg/mLは2026年3月12日に承認され、5月20日に薬価収載された。ただし6月19日時点では未発売とされている。実際の自己負担は保険の負担割合や医療費の助成制度によって変わる。
わかっていること・わかっていないこと
- わかっていること:国内で12歳以上・30kg以上への用量が承認済み。36週の有効性と主な副作用は公表済み。
- わかっていないこと:6〜11歳の結果と申請予定。試験は募集中で、結果は公表されていない。
- 成長への影響を含む長期の安全性は、今後の情報を待つ必要がある。
同じJAK阻害薬のリトレシチニブでも、6〜12歳未満を対象とする第3相試験(NCT07029711)が進んでいる。主要評価の完了予定は2026年12月で、結果は未発表である。
今できる選択肢(保護者の方へ)
子どもの円形脱毛症を相談する先は皮膚科である。AGAクリニックや育毛サロンは子どもの円形脱毛症の受診先ではない。違いは薄毛の相談先の選び分けと皮膚科とAGAクリニックの違いにまとめた。
バリシチニブを使うかどうかは、脱毛の範囲や経過、ほかの治療歴、感染症の既往などを踏まえて医師が判断する。効果や副作用には個人差があり、すべての子どもに適するわけではない。
原因や一般的な治療は円形脱毛症の原因と治療、日常の注意は円形脱毛症のセルフケアが参考になる。成人向けの新薬はウパダシチニブの記事で扱っている。
よくある質問
子どもの円形脱毛症にバリシチニブは使える?
2026年6月19日の一部変更承認で、12歳以上かつ体重30kg以上の小児に4mgを1日1回の用量が加わった。対象は脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限られ、使うかどうかは医師が判断する。
11歳以下の子どもは対象?
国内で承認された用量は12歳以上かつ体重30kg以上が対象である。6〜11歳を含む試験は継続中で、2026年10月3日時点で結果は公表されていない。
どこを受診すればいい?
円形脱毛症の診断と治療の相談先は皮膚科である。AGAクリニックはAGAの治療が中心で、子どもの円形脱毛症の受診先ではない。
どんな副作用が報告されている?
日本イーライリリーの発表では、36週までの主な副作用はざ瘡、上気道感染、頭痛、鼻炎、好酸球増加症などだった。PMDAの審査報告書では、成人と比べて皮膚真菌感染症やうつ病・自殺念慮の発現割合が高かったとされる。
まとめ
バリシチニブは2026年6月19日、12歳以上かつ体重30kg以上の小児の円形脱毛症に使えるようになった。対象は脱毛が広範囲に及ぶ難治の場合に限られる。
36週でSALT20以下になった割合は4mgで42.4%だった。11歳以下の結果はまだ出ていない。まずは皮膚科で相談し、治療の選択は医師と決めてほしい。
出典
- 日本イーライリリー:オルミエント 円形脱毛症の用法及び用量の一部変更承認(EL26-25、2026年6月19日)。
- PMDA:オルミエント 審査報告書(2026年4月28日)。
- EMA:Olumiant CHMP肯定的見解の要約(2026年2月26日)。
- Eli Lilly and Company「FDA approves Lilly’s Olumiant (baricitinib) for pediatric patients 12 years of age and older with severe alopecia areata」(2026年9月25日)
- ClinicalTrials.gov:NCT05723198(BRAVE-AA-PEDS)。
- ClinicalTrials.gov:NCT07029711(ファイザー、6〜12歳未満)。








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