デュルキソリチニブは、重症の円形脱毛症の成人に使うJAK阻害薬の飲み薬です。米国では2024年に、英国では2026年3月に承認されました。日本では未承認で、2026年6月に日本人を対象とする第3相試験が始まっています。海外での承認内容と、日本での試験の中身を一次情報から整理します。
どんな薬か
デュルキソリチニブ(deuruxolitinib)は、Sun Pharmaが開発した薬で、海外での製品名はLeqselviです。米国の添付文書では、成人の重症円形脱毛症を対象とするJAK阻害薬とされています。用量は8mgを1日2回です。
英MHRAは、この薬がJAK1・JAK2・TYK2をJAK3よりも強く抑え、毛包まわりの炎症を弱めると説明しています。同じ仕組みの薬の全体像はJAK阻害薬と円形脱毛症の最新動向で解説しています。
これまでの承認と2026年の動き
- 2024年7月25日:米FDAが承認(新有効成分として)。
- 2026年3月10日:英MHRAが承認(3月12日に公表)。国際承認認証手続(IRP)による承認。
- 2026年6月1日:日本人対象の第3相試験(NCT07617597)がClinicalTrials.govに初めて掲載。
- 2026年6月19日:同試験が開始。
- 2026年7月15日:英NICEがTA1178を公表し、承認の範囲内で重症の成人への使用を推奨。
NICEの推奨には、企業が割引の取り決めに沿って提供するという条件が付いています。NICEは、イングランドの公的医療で通常の治療とされるリトレシチニブとの直接比較は無いと記載しています。
試験の結果
MHRAの発表によると、承認の根拠になった主要な試験は2本で、合計1,223例の成人が参加しました。対象は頭皮の毛の50%以上を失った状態が6か月以上続いている人です。参加者は8mg、12mg、プラセボのいずれかを1日2回、24週間飲みました。
8mgを飲んだ人では、24週の時点で約30%が頭皮の80%以上、約23%が90%以上に毛がある状態になったとされています。最も多い副作用(10人に1人を超える)は頭痛とざ瘡(にきび)でした。
米国の添付文書にある主な注意
米国の添付文書には、重い感染症、死亡、悪性腫瘍、主要な心血管イベント、血栓症についての枠囲みの警告があります。一部は、関節リウマチで別のJAK阻害薬を使ったデータにもとづく警告です。
また、薬の分解に関わる酵素CYP2C9の働きが生まれつき弱い人や、CYP2C9を中等度以上に妨げる薬を使っている人には使えません。使用前に結核の検査をすることも求められています。ほかのJAK阻害薬や生物学的製剤、強い免疫抑制薬との併用は推奨されていません。
日本での状況
2026年10月3日時点で、デュルキソリチニブは日本では承認されていません。国内では、Sun Pharma Japanが日本人を対象とする第3相試験THRIVE-AAJP(NCT07617597、jRCT2031260062)を実施しています。登録情報の主な内容は次のとおりです。
| 対象 | 18〜65歳の日本人で、重症の円形脱毛症(SALT 50以上)があり、今回の脱毛が6か月以上続いている人。 |
|---|---|
| 方法 | 無作為化・二重盲検・プラセボ対照。8mgまたはプラセボを1日2回、24週間。 |
| その後 | プラセボ群も含めて全員が8mgを飲み、52週まで継続。 |
| 主要評価 | 24週でSALT 20以下になった人の割合。 |
| 予定人数 | 78例。 |
| 状況 | 2026年6月19日開始、募集中。主要評価の完了予定は2028年2月。 |
登録されている実施施設は国内の18か所です。無作為化の前4か月以内にJAK阻害薬などの全身性免疫抑制薬を使った人は、対象から外れます。承認申請の時期は公表されていません。
わかっていること・わかっていないこと
わかっているのは、米国と英国で成人の重症例に承認されていること、そして日本人を対象とする第3相試験が進んでいることです。
わかっていないのは、日本人での効果と安全性、日本での承認申請の時期です。EUへの申請状況は確認できませんでした。国内で使えるほかのJAK阻害薬と直接比べた結果もありません。
今できる選択肢
デュルキソリチニブは、日本では治験の参加者以外は使えません。国内には、重症の円形脱毛症に使える承認済みのJAK阻害薬があります。12歳以上の小児への用量追加についてはバリシチニブの解説で扱っています。
どの治療にも個人差があり、JAK阻害薬には感染症などの副作用のリスクがあります。治療を始めるかどうかは、皮膚科の医師と相談して決めてください。病気の基本は円形脱毛症の原因と治療法にまとめています。
相談先に迷う場合は皮膚科・AGAクリニック・育毛サロンの違いを参考にしてください。海外の薬の個人輸入の問題点は薬の個人輸入のリスクで解説しています。JAK阻害薬以外の新しい注射薬候補はこちらの記事にまとめました。
よくある質問
デュルキソリチニブは日本で処方してもらえますか?
2026年10月3日時点で、日本では承認されていないため、通常の診療では処方されません。国内では日本人の重症円形脱毛症の成人を対象とする第3相試験が2026年6月に始まっています。
個人輸入で手に入れて使ってもよいですか?
勧められません。米国の添付文書では、重い感染症などに関する枠囲みの警告や、薬の分解に関わる体質による使用禁止が定められています。使う前の検査や使用中の管理が前提の薬なので、医師の管理なしに使うのは危険です。
今ある円形脱毛症の飲み薬と比べて効果は高いですか?
直接比べた試験はありません。英国NICEは、リトレシチニブとの間接比較の結果は不確かだと述べています。数値だけで優劣を判断するのは適切ではありません。
日本人試験の結果はいつわかりますか?
登録情報では、主要評価の完了予定は2028年2月、試験全体の完了予定は2028年9月です。どちらも予定であり、変わる可能性があります。承認申請の時期は公表されていません。
まとめ
デュルキソリチニブは、米国で2024年、英国で2026年3月に承認された円形脱毛症の飲み薬です。英NICEは2026年7月に、重症の成人への使用を推奨しました。日本では未承認で、日本人を対象とする第3相試験が2026年6月に始まり、募集中です。今の治療は皮膚科で相談してください。
出典
- 米FDA Drugs@FDA:LEQSELVI(NDA 217900)承認履歴(承認日2024年7月25日)。
- 米FDA:LEQSELVI 米国添付文書(2024年)。
- 英MHRA:deuruxolitinib(Leqselvi)承認の発表(承認2026年3月10日、公表2026年3月12日)。
- 英NICE:TA1178 Deuruxolitinib for treating severe alopecia areata(2026年7月15日)。
- ClinicalTrials.gov:NCT07617597(THRIVE-AAJP、Sun Pharma Japan、初回掲載2026年6月1日、最終更新2026年9月29日)。








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