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中国Kintor社の外用薬「GT20029」は、男性ホルモンの受容体を分解させる新しい仕組みのAGA治験薬です。2026年8月に同社は、中国の第IIa相が主要評価項目を達成したことと、次の試験の計画を開示しました。ただし10月3日時点で第3相の開始は確認できず、どの国でも未承認です。
GT20029はどんな薬か
GT20029は、香港証券取引所に上場するKintor Pharmaceutical(開拓薬業)が自社開発した外用薬です。頭皮に塗るチンキ剤やゲル剤として開発されています。
同社はGT20029を「AR-PROTAC化合物」と説明しています。PROTACは一般に、狙ったタンパク質を細胞内の分解の仕組みへ運び、分解させる設計の化合物を指します。GT20029の標的は、AGAの発症に関わるアンドロゲン受容体(AR)です。
同社は、第2相を終えた外用PROTAC化合物として世界初だと主張しています。また、皮膚への浸透をとどめて全身への吸収を避ける設計だと説明しています。
ピリルタミドとの違い
Kintor社は、同じくARを標的にする外用薬ピリルタミド(KX-826)も開発しています。ピリルタミドはARに結合して男性ホルモンの作用をふさぐ「AR拮抗薬」です。GT20029は、AR自体を分解させて量を減らすという別のアプローチです。
開発段階も異なります。ピリルタミドは中国で第3相を終え、同社は2026年後半に中国で承認申請する計画と開示しています。GT20029はまだ第2相を終えた段階です。ピリルタミドの詳細はピリルタミドの治験状況で解説しています。
2026年に何があったか
2026年8月19日、Kintor社は香港証券取引所に中間決算を開示しました。その中でGT20029について、次の点が示されています。
- 中国の第IIa相(AGA)が主要評価項目を達成した
- 米国での第1相(AGA・ざ瘡)を完了した
- 中国での男性AGAの第IIb/III相を2026年後半に始める計画
- 米国での男性AGAの第2相も計画している
いずれも計画の表明で、時期は変わる可能性があります。ClinicalTrials.govでGT20029を検索すると、登録は第1相2件と第2相1件で、いずれも完了済みでした。第3相を含む新しい試験の登録は、10月3日時点で見当たりませんでした。
試験の結果
中国の第2相(第IIa相)は、多施設・無作為化・二重盲検・プラセボ対照で行われました。論文によると、2023年4月から2024年4月に成人男性180例が6群に割り付けられました。GT20029の0.5%または1.0%、またはプラセボを、1日1回か週2回、12週間塗布しています。
| 群(12週時点) | 毛髪数の増加 | プラセボとの差 |
|---|---|---|
| 0.5% 1日1回 | 16.80本/cm² | 6.69本/cm² |
| 1.0% 週2回 | 11.94本/cm² | 7.36本/cm² |
数値は同社の中間決算の開示によるものです。論文の抄録では、この2群のプラセボとの比較でp=0.032とp=0.023と報告されています。1.0%週2回群では毛の太さもプラセボより改善したとされています(p=0.011)。
安全性について抄録は、有害事象の発生率は全群で同程度で、多くが軽度だったとしています。同社は、試験中に性機能に関する有害事象はみられなかったとも開示しています。ただし12週間・180例の試験で、長期の効果や安全性はまだわかりません。
日本での状況
GT20029はどの国でも承認されていません。臨床試験の登録は中国と米国で、日本での治験登録や、同社による日本での開発計画は確認できませんでした。日本で正規に入手する手段は現時点ではありません。
わかっていること・わかっていないこと
わかっていること:中国の第2相で、12週時点の毛髪数がプラセボより増えたと報告されています。全身への吸収は限られ、有害事象はプラセボと同程度と開示されています。
わかっていないこと:次の試験の開始時期、より長い期間での効果と安全性、女性への効果は不明です。既存の治療薬やピリルタミドと直接比べた結果もありません。承認申請の時期は示されていません。
今できる選択肢
GT20029は治験段階の薬で、今の時点で使うことはできません。日本で使える治療には、フィナステリドやデュタステリドの内服、ミノキシジルの外用があります。違いはフィナステリドとデュタステリドの比較で整理しています。
未承認薬を海外から個人輸入することは勧められません。理由はAGA薬の個人輸入のリスクをご覧ください。効果には個人差があり、どの薬にも副作用があります。治療を始める前に医師に相談してください。
よくある質問
GT20029は第3相試験に入っていますか?
2026年10月3日時点で、第3相を含む次の試験の開始は確認できませんでした。同社は2026年8月の中間決算で、中国での第IIb/III相と米国での男性AGA第2相を計画していると発表した段階です。
ピリルタミドとは何が違うのですか?
どちらも同じ会社の外用薬ですが、ピリルタミドはアンドロゲン受容体の働きをふさぐ拮抗薬です。GT20029は受容体そのものを分解させる設計の化合物で、開発段階もピリルタミドの方が先に進んでいます。
日本で使えますか?
どの国でも承認されていないため、日本を含め正規に使う方法はありません。日本での治験登録や開発計画も確認できませんでした。
副作用はわかっていますか?
同社の開示では、第2a相の有害事象の発生率はプラセボと同程度とされています。米国第1相では塗った部位の乾燥やかゆみなどの軽い症状が多かったと報告されています。長期の安全性はまだわかっていません。
まとめ
GT20029は、ARを分解させるという新しい仕組みの外用AGA治験薬です。中国の第2相で毛髪数の増加が報告され、同社は次の試験を計画しています。ただし第3相の開始は確認できず、承認までの道のりは長いと考えられます。ほかの新薬はAGA新薬一覧やクラスコテロンの解説もあわせてご覧ください。
出典
- Kintor Pharmaceutical Limited 2026年中間決算公告(Kintor Pharmaceutical/香港証券取引所/2026年8月19日)
- Hu R, et al. Efficacy and safety of topical GT20029 in male patients with androgenetic alopecia. J Dermatolog Treat. 2025;36(1):2574304(PubMed/2025年12月2日オンライン公開)
- ClinicalTrials.gov NCT06692465(中国・第2相)(米国国立医学図書館/2026年10月3日閲覧)
- ClinicalTrials.gov NCT05428449(米国・第1相)(米国国立医学図書館/2026年10月3日閲覧)
- ClinicalTrials.gov NCT06468579(中国・第1相)(米国国立医学図書館/2026年10月3日閲覧)
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