資生堂のS-DSC治療とは|自分の毛根の細胞を培養して注入する再生医療

資生堂のS-DSC治療とは|自分の毛根の細胞を培養して注入する再生医療|AGA基礎知識 AGA基礎知識

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S-DSC治療は、自分の後頭部の毛根から採った細胞を培養し、薄毛の部分に注入する再生医療です。資生堂と大学病院の共同研究で開発され、2024年から医療機関で自由診療として提供されています。

2026年4月には提供する医療機関がさらに増えました。本記事では、査読論文で報告された客観的な数値と、医療機関の発表にある「効果実感率」を分けて整理します。再生医療全体の動向は毛包再生医療は日本でどこまで来たかもあわせてご覧ください。

どんな治療か

DSCは毛球部毛根鞘細胞の略で、毛根の根元を包む組織の細胞です。東邦大学医療センター大橋病院の発表では、脱毛していない後頭部の頭皮からDSC細胞を採取し、体外で増やしてから脱毛部に投与すると説明されています。

採取した細胞は資生堂の管理・監督下で輸送・培養・凍結保管され、投与日に解凍して専用の注入器で注入します。毛髪の成長に関わる毛乳頭細胞の働きを活発にすることが期待されている、と同発表は記しています。

本治療は再生医療等安全性確保法の第二種再生医療等に該当し、自由診療のため費用は全額自己負担です。同発表は、全ての患者に良好な結果や期待される程度の結果が出るとは限らないとも注記しています。

これまでの経緯(日付つき)

時期出来事
2016年S-DSCを用いた臨床研究を開始。
2020年3月5日用量を探る二重盲検試験の結果が米国皮膚科学会誌(JAAD)オンライン版に掲載。
2020年12月10日杏林大学を加えた3施設で、広い範囲に複数回投与する臨床研究の開始を発表。
2023年9月26日3施設の臨床研究の結果が日本皮膚科学会の英文誌(J Dermatol)オンライン版に掲載。
2024年7月1日東邦大学医療センター大橋病院が治療の提供を開始(6月28日発表)。
2026年4月皮膚科医院が提供を開始(6月23日発表)。

試験の結果

研究デザインと対象主な結果(原文の要旨)
JAAD 2020無作為化プラセボ対照二重盲検の用量探索試験。男性50人・女性15人(33〜64歳)に単回注射。3.0×10⁵個の細胞を注射した部位で、総毛髪密度と積算毛径が6か月後と9か月後にプラセボより有意に増加。重い有害事象はなし。効果は9か月までの一時的なものと限界に記載。
J Dermatol 2023単群・多施設の試験。36人に3か月間隔で2回注射し、12か月評価。盲検での外観写真評価で改善は30%。積算毛径は107.6 ± 152.6 μm/cm²増(ベースライン比+1.4%)、平均毛径は0.9 ± 0.9 μm増(+2.2%)。62.9%が何らかの改善を自己報告。重い有害事象はなし。

2020年の試験はプラセボと比べた試験ですが、1回だけ小さな範囲に注射したものです。2023年の試験は実際の治療に近い投与方法ですが、比較対照のない単群の試験で、論文要旨に毛髪密度の数値は示されていません。

なお、2023年の論文には2026年3月に訂正(Erratum)が掲載されています。訂正の内容は今回確認できませんでした。

「効果実感率65.7%」の読み方

2026年6月23日の医療機関の発表は、被験者36人(男性17人・女性19人)で、治療開始18カ月後の効果実感率を65.7%、女性に限ると88.9%と紹介しています。出典として国内の医学雑誌の記事が挙げられていますが、原文は確認できませんでした。

この数値は、受けた本人が効果を感じたかを尋ねた主観的な評価です。盲検の外観写真評価で改善とされた割合(2023年論文で30%)とは別の指標で、毛髪の本数や太さの客観的な測定値ではありません。

東邦大学の発表も、自己評価では外観写真評価を上回る比率で効果を実感したと回答した、と説明しています。改善と評価された割合は、女性、40代以上、薄毛が比較的初期の人ほど高い傾向があったとされます。

日本での状況

S-DSC治療は、医薬品医療機器等法で承認された製品としてではなく、再生医療等安全性確保法に基づく自由診療として提供されています。情報提供サイトの医療機関一覧には、2026年10月3日時点で大学病院を含む6施設が掲載されていました。

費用は治療範囲や回数に応じて医療機関ごとに異なり、確認した資料に具体的な金額はありませんでした。2024年の大学病院の発表では受診に紹介状が必要とされており、条件は施設ごとに案内を確認してください。

海外の自家細胞治療の開発例

韓国では、Epibiotech社が自家毛乳頭細胞を使うEPI-001の第I/IIa相試験(NCT07618195)を2026年1月12日に開始しています。予定42人で、主要評価項目は用量制限毒性の発生率です。結果はまだ公表されていません。

わかっていること・わかっていないこと

わかっているのは、プラセボ対照試験で注射部位の毛髪密度と積算毛径が一時的に有意に増えたこと、実用に近い試験で重い有害事象がなかったことです。女性で改善が大きい傾向も報告されています。

わかっていないのは、効果がどのくらい続くか、何回の投与が必要か、承認薬と比べてどうかです。承認薬と直接比べた試験は、今回確認した資料には見当たりませんでした。幹細胞を使う他の治療との違いは幹細胞による薄毛治療の解説で整理しています。

今できる選択肢

AGAには国内で承認された内服薬や外用薬があります。主な選択肢はフィナステリドとデュタステリドの比較とミノキシジルの外用と内服の比較で確認できます。

効果には個人差があり、薬にも再生医療にも副作用や不利益の可能性があります。再生医療を受ける前の確認項目は厚労省「自己点検」項目をもとにした確認リストにまとめました。まずは医師に相談し、承認薬で何ができるかを確認してください。

新薬を待つ前に、今の治療を相談する

承認済みの治療で何ができるか、医師に確認するところから始められます。

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よくある質問

S-DSC治療は男性も受けられますか?

臨床研究は男性と女性の両方を対象に行われ、提供している大学病院は対象疾患を男性型および女性型脱毛症としています。適応の詳しい条件は医師の説明を受けて確認してください。

効果実感率65.7%は髪が増えた人の割合ですか?

いいえ。受けた本人が効果を感じたかを尋ねた主観的な評価です。2023年の論文では、盲検の外観写真評価で改善とされた割合は30%でした。

費用はいくらですか?

自由診療のため全額自己負担で、治療範囲や回数に応じて医療機関ごとに異なります。確認した公開資料に具体的な金額はなかったため、各医療機関に直接確認してください。

承認薬の代わりになりますか?

承認薬と直接比べた試験は確認できませんでした。代わりになるかは現時点で判断できないため、承認薬を含めた選択肢を医師と相談してください。

まとめ

S-DSC治療は、自分の毛根の細胞を培養して注入する第二種再生医療で、自由診療として提供されています。プラセボ対照試験では注射部位の毛髪密度と積算毛径が一時的に有意に増えました。

一方、実用に近い試験は単群で、外観写真で改善とされたのは30%でした。「効果実感率」は主観評価の数値です。費用や持続期間も含め、承認薬と比べながら医師と相談してください。

出典

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