育毛剤の広告にある「国が認可」や使用前後の写真は、それだけで効果の根拠にはなりません。東京都は2026年3月23日、こうした表示を含む育毛剤の広告に景品表示法の措置命令を出しました。公表された事実と、区分ごとに表示できる効能の範囲、広告を見るときの確認点を整理します。
東京都の措置命令(2026年3月23日)で何が認定されたか

東京都は、プルチャーム株式会社が販売する育毛剤「イクモアナノグロウリッチ」(医薬部外品)について、景品表示法第7条第1項に基づく措置命令を出しました。対象は、Instagram上の広告から遷移したウェブサイトなどの表示です。
都が不当表示と認定した主な内容は次のとおりです。
- 「国が育毛効果を認可」などの見出しで、外見上わかるほど薄毛が改善する発毛効果があるかのように表示。都が求めた根拠資料は合理的な根拠と認められなかった
- 20世紀のビタミン研究のノーベル賞を根拠に、商品に「ノーベル賞受賞級」の効果があるかのように表示
- 使用前後の頭髪画像は、モデル画像に頭髪の薄い人の画像を合成するなどして作られたもの
- SNSアカウントの持ち主が投稿したように見せた使用報告と前後画像は、委託先の広告制作会社が作ったもので、実在の人物の投稿ではなかった
- 「完売」「在庫僅少」と表示した期間に、実際には在庫が相当数あった
このほか、広告であるのに「広告」「PR」の表示が一切なかった点と、専門資格を持つ人物の意見として載せた人物が自社従業員だと明かしていなかった点が、ステルスマーケティング告示違反とされました。
命令の内容は、違反である旨の一般消費者への周知、同様の表示の禁止、再発防止策の役員・従業員への周知です。都は、同名や類似名の事業者と間違えないよう注意を呼びかけています。
2024年10月10日の措置命令
東京都は2024年10月10日にも、株式会社ヴィワンアークスの育毛剤「MIHORE(ミホレ)」(医薬部外品)について措置命令を出しています。
複数のアフィリエイトサイトで、短期間で薄毛が外見上わかるまで改善するかのような表示をしていた点が優良誤認とされました。「※個人の感想であり効果効能を保証するものではありません」などの注記があっても、消費者の認識を打ち消すものではないと判断されています。
医薬品・医薬部外品・化粧品で表示できる効能の範囲

商品の区分ごとに、表示できる効能の範囲は違います。
| 区分 | 表示できる効能の範囲 | 例 |
|---|---|---|
| 医薬品(第1類など) | 個別に承認された効能・効果 | ミノキシジル外用薬:壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防 |
| 医薬部外品(育毛剤・養毛剤) | 育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛 | 薬用育毛剤 |
| 化粧品 | 56項目に限定(頭皮・毛髪では、清浄にする、フケ・カユミを抑える、裂毛・切毛・枝毛を防ぐなど) | スカルプエッセンス、ヘアトニック等 |
医薬部外品の範囲は厚生労働省の通知(2017年9月29日)、化粧品の56項目は同省の局長通知(2011年7月21日)に基づき、福岡県の資料で確認しました。
同じ通知は、広告の表現は承認を受けた効能効果の範囲を超えてはならないとしています。医薬部外品の育毛剤が、医薬品のように特定の脱毛症を治すかのように示すのは範囲外です。
「国が認可」「使用前後の写真」「使用者の声」はどう扱われるか
厚生労働省の広告基準の解説は、「厚生労働省認可(許可・承認等)」といった表現を、公的機関などの推せんを示す広告の制限に抵触するとしています。承認や許可は販売の前提であり、効果の保証ではありません。
図面や写真は、使用前・後を問わず、承認外の効能を想起させるものや効果を保証する表現は認められないとされています。愛用者の感謝の言葉など使用経験を示す広告も、使用感の説明などを除いて原則として行ってはならないとされています。
2023年10月1日からは、広告であることがわかりにくい表示(ステルスマーケティング)も景品表示法違反になりました。消費者庁は、事業者がインフルエンサーなどに依頼した投稿も広告に含まれると説明しています。
広告チェックリスト

| 確認する点 | 注意したい表示の例 |
|---|---|
| 区分は何か | 医薬部外品・化粧品なのに「発毛剤」「AGAが治る」と読める表現 |
| 公的な裏づけを強調していないか | 「国が認可」「厚生労働省承認」で効果を保証するかのような見出し |
| 使用前後の写真 | 短期間で劇的に変わる画像、撮影条件が書かれていない画像 |
| SNSの使用報告 | 広告・PRの表示がない投稿、同じ言い回しの投稿が並ぶ |
| 専門家のお墨付き | 資格名だけで、所属や広告主との関係が書かれていない |
| 権威づけ | 商品と関係のない受賞歴や研究実績を効果の根拠にしている |
| 在庫・期限 | 「残りわずか」「本日限り」で購入を急がせる |
| 注記 | 小さな「※個人の感想です」で強い表現を打ち消そうとしている |
承認内容の確かめ方

第1類医薬品などの一般用医薬品は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」で、効能・効果や使用上の注意を確認できます。
医薬部外品は、このPMDAの検索の対象とは明示されていません。パッケージの「医薬部外品」表示と有効成分を確認し、不明な点はメーカーの窓口や薬剤師に確かめるのが確実です。
医療機関の広告も監視の対象です。厚生労働省の資料(2026年3月26日)によると、令和7年度のネットパトロールでは違反ありが1,842サイト、違反は5,225件でした。InstagramとTikTokでは、治療前後の写真(ビフォーアフター)に関する違反が最も多く確認されています。
今できる選択肢
育毛剤を選ぶときは、広告の言葉より区分と有効成分を先に見るのが確実です。成分ごとの違いは育毛剤の有効成分の比較にまとめています。
発毛の効能が承認された市販薬を検討するならリアップX5の種類と違いを、海外製品の購入を考えている人は個人輸入のリスクも確認してください。
効果や副作用の出方には個人差があります。頭皮の異常や急な抜け毛があるときは、皮膚科などの医療機関に相談してください。相談先の違いは薄毛の相談先の比較で整理しています。
よくある質問
「国が認可した育毛剤」なら効果は確かですか?
いいえ。承認は販売の前提で、効果の保証ではありません。厚生労働省の広告基準の解説は、厚生労働省認可といった表現を広告の制限に抵触するとしています。
医薬部外品の育毛剤は「発毛剤」と同じですか?
同じではありません。医薬部外品の効能は育毛剤の範囲に限られます。発毛の効能が承認された市販薬はミノキシジル配合の第1類医薬品です。
使用前後の写真は信用できますか?
写真だけで判断しないことをおすすめします。2026年3月の措置命令では、モデル画像に別人の画像を合成した使用前後画像が不当表示と認定されました。
「※個人の感想です」と書いてあれば問題ないのですか?
そうとは限りません。2024年10月の措置命令では、こうした注記があっても消費者の認識を打ち消すものではないと判断されています。
まとめ
東京都の措置命令では、「国が認可」の見出し、合成した使用前後画像、制作会社が作ったSNS投稿、事実と異なる完売表示などが不当表示と認定されました。
広告を見たら、まず区分と有効成分、承認された効能の範囲を確かめましょう。強い言葉や写真だけで購入を決めないことが、失敗を避ける近道です。
出典
- 東京都生活文化局「景品表示法に基づく措置命令 Instagram上の広告から遷移したウェブサイト等で育毛剤に係る不当表示を行っていた通信販売事業者」(2026年3月23日)
- 東京都 報道発表「育毛剤に係る景品表示法に基づく措置命令」(2024年10月10日)
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」薬生監麻発0929第5号(2017年9月29日)
- 福岡県保健医療介護部薬務課「化粧品・医薬部外品について」(2026年7月14日)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制」
- 厚生労働省医政局総務課「ネットパトロール事業について(令和7年度)」第7回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会 資料2(2026年3月26日)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」
- 大正製薬「リアップリジェンヌプラス」ニュースリリース(2026年8月18日)








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